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東京地方裁判所 平成5年(ワ)16744号 判決

原告

野村政行

被告

セントラル警備保障株式会社

右代表者代表取締役

齋藤隆

右訴訟代理人弁護士

宮沢邦夫

藤本博史

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、一般職と同日数の年間休日一二一日を付与しろ。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、被告の社員であり、警務職として就労している。

2  被告においては、警務職の休日は年間を通じて八六日にすぎないのに、一般職の休日は日曜日、土曜日、祝日等合計一二一日とされている。これは、警務職と一般職とを差別するものであって、憲法一四条、労基法三条に違反する差別待遇である。

よって、原告は、被告に対し、一般職と同日数の年間休日一二一日を付与することを求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1の事実は認める。

2  請求原因2の事実のうち、警務職の休日が年間を通じて八六日であることは認め、その余は否認する。被告の就業規則では、一般職の休日について、日曜日、土曜日、国民の祝日(国民の休日を含む)、一二月三一日、一月二日及び三日とし、国民の祝日が日曜日と重複するときは、その翌日を休日とし、それ以外の場合には振り替えないと規定され、警務職の休日については、年間を通じて八六日とし、三月及び一〇月は八日宛て、その余の各月へは七月宛割り当てると規定されているが、休日日数における警務職と一般職の右の差異が憲法一四条、労基法三条に違反することは争う。

3  被告の主張

原告は、警務職として採用されて、現在に至っているものであるところ、一般職と警務職は、同種の職種ではないから、就業規則で一般職と警務職とで異なる休日日数を定めたとしても、憲法一四条、労基法三条に違反するものではない。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるからこれを引用する(略)。

理由

一  原告が被告において警務職として就労していることは、当事者間に争いがない。

(人証略)により成立の認められる(証拠・人証略)によれば、被告は、警備業務及び安全管理業務の請負及びその保障等を目的とする会社であり、社員には警務職と一般職がいること、警務職は、警備法上の警備員として主に客先の警備業務の実施を内容とする現業を職務内容とするものであるのに対し、一般職は、警務職以外の社員で、営業、技術、事務等を職務内容とするものであること、警務職と一般職は、採用時に区別して採用され、就業規則上においても、職種が異なるものと明文で規定されているうえ、賃金、労働時間、休日等の労働条件の点でも職務内容の差異に応じた異なる扱いがされていること、勤務形態については、一般職が昼間勤務であるのに対し、警務職は二交替制隔日勤務の二四時間勤務者(午前一〇時から翌日午前一〇時まで)がその八〇パーセントを占めていること、右のような勤務形態の差異から、休日については、就業規則上、一般職は日曜日、土曜日、国民の祝日(国民の休日を含む)、一二月三一日、一月二日及び三日とし、国民の祝日が日曜日と重複するときは、その翌日を休日とし、それ以外の場合には振り替えないと定められているのに対し、警務職は年間を通じて八六日とし、三月及び一〇月は八日宛て、その余の各月へは七日宛て割り当てると定められていることが認められる。

二  原告は、被告が一般職と警務職との間に右のような休日日数の差異を設けたことをもって、憲法一四条、労基法三条に違反すると主張する。

しかし、右一で認定した事実によれば、被告における一般職と警務職とでは職種が明らかに異なり、原告と被告は、警務職としての雇用契約を締結したものであるから、就業規則上一般職と警務職との間に休日日数の差異があるとしても、この差異は自らの意思に基づいて締結した雇用契約の内容自体に基づくものというべきであり、また、右差異を設けた理由をみても、一般職と警務職の勤務形態上の差異に照らせば、これが不合理な差別的扱いであるとまではいいがたい。したがって、就業規則上一般職と警務職との間に休日日数の差異を設けたことをもって、ただちに憲法一四条、労基法三条に違反する差別的取扱であるということはできない。

以上によれば、原告の主張は、その余の点につき判断するまでもなく、失当というほかない。(なお、一般職と警務職との間の休日日数の差異が憲法一四条、労基法三条に違反する場合であっても、これを不法行為と構成して損害賠償を請求することは格別、本件のような給付を命じる判決を求める訴えは許されないものというべきである。)。

三  よって、原告の本件請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 坂本宗一)

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